
2026年度税制改正 「5年ルール」に注意|賃貸管理
<目次>
はじめに
2026年度の税制改正は、オーナー様にとって今後の経営戦略や資産承継プランを左右する重要な転換点となります。今回の改正に込められた国からのメッセージは「行き過ぎた相続対策の是正」と「適正な帳簿管理を伴う健全な事業運営の支援」と言えます。今回は、賃貸経営とオーナーの資産形成に直結する3つの重要ポイントに絞り、今後の対策と押さえておくべき影響について解説します。
1.駆け込みの相続税対策がリスクに
今回の税制改正で、オーナー様の戦略に最も大きな影響を与えると思われる内容が、貸付用不動産の相続税評価における「5年ルール」の導入です。
これまで、相続財産である現金を建物や不動産などに換えることで相続税評価額を時価の40%~70%程度に圧縮する手法は、相続税対策として広く知られていました。これに対し、新しいルールでは相続開始前(または贈与前)「5年以内」に取得・新築したアパート・賃貸マンションについては、従来の路線価等による圧縮評価が適用されず、原則として「通常の取引価額」で評価されることになります。
例:1億円で賃貸マンションを購入した場合
・従来または新ルールで5年経過後に相続開始
建物評価額(固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合))
土地評価額(路線価または倍率方式×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合))
=相続税評価額が4千万円~7千万円(取得価額の40%~70%)程度で評価
・新ルールで取得後5年以内に相続開始
8千万円(取得価額の80%)で評価
つまり、相続が近づいてから急いで建てたり購入したりして評価額を下げるという駆け込みの相続対策が事実上封じられる形です。取得から5年が経過すれば、原則として従来の評価方法に戻るため、今後は物件を取得する場合は、より早い段階から計画的に準備し、長期的な視点で賃貸経営を行うことがポイントとなります。健康寿命や次世代への承継タイミングから、既に対策を立てていらっしゃる方も見直す必要がある場合があります。
2.基礎控除等の引き上げ
厳しい規制の一方で朗報となるのが、基礎控除や給与所得控除の引き上げです。給与収入の非課税ラインが178万円へと見直されるこの措置は、賃貸経営のキャッシュフロー改善につながる可能性があります。
基礎控除の拡大はオーナー様ご自身の課税所得を減らし、税負担の軽減に寄与します。さらに、給与を受け取る専従者の方については、基礎控除と給与所得控除の両枠が広がるため、これまで非課税枠に収めるために抑えていた給与上限の引き上げを検討する余地が生まれます。オーナー様の高い所得をご家族へより多く分散しやすくなる形です。ただし、住民税の非課税基準や社会保険の扶養なども影響するため、総合的にシミュレーションして世帯の手残り資金を最大化するポイントを見極める必要があります。
3.青色申告特別控除が「最大75万円」へ
事業的規模(いわゆる5棟10室基準など)で賃貸経営を行っている個人事業主向けに、青色申告特別控除の上限が従来の最大65万円から75万円へと引き上げられます。
従来の複式簿記・電子申告等に加え、優良な電子帳簿の備え付け・保存などが必須となります。実質的には税率に応じた数万円程度ですが、毎年得られる点がメリットです。
長期ビジョンと適正な管理がカギに

今回の税制改正は、不動産による行き過ぎた相続対策を厳格に制限する一方で、しっかりと帳簿を付け長期的に収益を生む賃貸経営を評価する内容となっています。制度変更のメリットを活かすためにも、まずは不動産と相続に詳しい専門家に相談し、ご所有物件のポートフォリオ、将来の相続・事業承継計画を点検・アップデートすることをお勧めいたします。ぜひオリバーのウェルスマネジメントチームをご活用いただければと思います。





