遺言書の有効性が争われるケースPart2|相続
<目次>
目次[非表示]
- 1.はじめに
- 2.ご高齢の方が遺言書を作成する場合の注意事項
- 2.1.①遺言書は公正証書遺言にする
- 2.2.②主治医の診断を受ける
- 2.3.③遺言者の普段の生活の様子を記録に残す
- 3.遺言能力で遺言書の有効性が争われる場合
- 4.まとめ
はじめに
皆さん、こんにちは!
オリバー 相続コンサルタントの名児耶です。
前回は遺言書作成の必要性や残された家族の為に作った遺言書が無効になるケースについてお話しました。
今回は、遺言書をご高齢の方が作成する場合、遺言書が無効にならないようにする為のポイントについてお話をします。
ご高齢の方が遺言書を作成する場合の注意事項
①遺言書は公正証書遺言にする
公正証書遺言は、公証人が公証役場において証人2人の前で、遺言者に遺言能力があるかどうかしっかりと判断し、法律上のミスなどもチェックして遺言書を作成してくれるので、内容の不備によって遺言書が無効になることや、偽造が疑われるおそれもありません。第三者が誰も確認しない自筆証書遺言に比べてはるかに信用性は高まります。また相続発生後、相続人は裁判所の検認を行わずに相続登記や銀行口座の解約などの手続きを行うことができ、自筆証書遺言よりメリットが多い遺言書の形式です。
②主治医の診断を受ける
遺言書を作成した後に、遺言書作成時に遺言能力がなかったと言われないようにするために、遺言書を作成する前に主治医の診断を受け、長谷川式簡易知能評価スケール(※)などの認知症の検査を受けておくと良いでしょう。最近物忘れが多くなってきたり家族に言われることがあるなどと感じておられている方は、こういった備えも必要です。
(※)この検査は30点満点で、大きな目安としては20点以下の場合には遺言能力に疑いが生じ、認知症であることが確定している場合は20点以上で軽度、11~19点で中度、10点以下で高度と判定されます。
③遺言者の普段の生活の様子を記録に残す
遺言者自身が日常生活状況を日記に書き留めたり、同居の家族などが遺言者の普段の生活の様子や会話をビデオに記録しておくなど、遺言作成時に遺言者に遺言能力がしっかりあることを立証するための客観的な資料を残しておくことが大切です。
遺言能力で遺言書の有効性が争われる場合
遺言書作成時、遺言者に遺言能力がなければその遺言書は無効ですが、「認知症=遺言能力がない」とただちに判断されるわけではありません。
遺言能力は遺言書の内容、遺言当時の遺言者の状態などを総合して判断されるので、認知症の方が作成した遺言書であっても必ず無効となるわけではなく、事案によって遺言能力の有無が判断されることになります。
つまり「公正証書であれば絶対に有効」とは限らず、後に遺言無効確認訴訟で判断能力の低下を理由に遺言書が無効となった判例もあります。
まとめ
ご高齢の方、特に判断能力が衰えている方が遺言書を作成する際は、細心の注意を払わなければ、遺言書が無効となったり、逆にトラブルになったりすることもあります。自筆証書遺言を作成する時は、本人に認知症の兆候が見られる場合、主治医や弁護士などと相談しつつ、遺言書作成時の遺言者の状況をビデオ撮影するなどして、本人の遺言能力がしっかりあることを立証するための証拠を確保することも大切です。基本的には、トラブルが少ない公正証書遺言で作成されることをお勧めいたします